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夏至

  • 執筆者の写真: FRACTUS 編集部
    FRACTUS 編集部
  • 6月21日
  • 読了時間: 3分

更新日:7月3日


2025年6月21日

二十四節気 「夏至」



 仏教伝来や神道、天皇などといった言葉は一般的に「日本」を説明するための重要なワードとして挙げられます。しかし、宗教や天皇崇拝は為政者や貴族に対してのもので、どこまで一般の日本人になじみのある存在だったのかはわかりません。例えば古来より日本人が信仰していたアミニズムというものは、どこかぼやっとした輪郭線の無いものでしたが、仏教が渡来することによってはじめて「神道」という名に変わり、明確な線を持ったのです。その本質は決して「宗教」として語られるものではなかったと云います。天皇という言葉も、それ自体は古代に中国を意識して出来たもので、明治時代以降は軍国主義にともなう民俗団結のためのシンボルとして、意図的に高められた側面もあるように思います。

 

 馴染みがありながら掴みどころがないもの。私にとってのそれは「日本文化」という言葉です。世界地図の東の果てに位置する長細い列島には、古来より人や物、あらゆるものが流入し、因果応報を繰り返し常に形を変えながら今に至っているように思います。その歴史を俯瞰すれば、固有、土着、外来という言葉の意味を定めるのも難しく、日本のかたちは常に流動的なのです。

 

 ではこの列島で暮らしてきた人々が日々対峙し、大切にしてきたものは何なのでしょうか。

神や仏といったキーワードさえ取り除いた先に現れるものは何なのでしょうか。きっとそれは風土ではないでしょうか。それは国家的政治的な日本ではなく、「素の日本」ともいうべき姿です。文化について考えるとき、はじめに素の姿をイメージすることで諸文化に対する見え方はより鮮明なものになるように思います。

 

 

仏は常にいませども 

うつつならぬぞあわれなる 

人の音せぬ暁に 

ほのかに夢に見えたまふ(梁塵秘抄)

 

 これは、仏は居るけれど姿は見えないと歌ったものです。また、鎌倉時代の僧、道元は「山水経」で山や川に仏が潜んでいると説きました。

インドや東南アジア諸国で見ることができる煌びやかで堂々とした仏陀の姿とは対照的な仏の世界です。仏は日本に来ると隠れるのです。それは風土による違いに他なりません。モンスーン気候特有の日本の湿度があらゆる文化を霞の中に包み込みこの国と人々にとって適切な姿に調整しているかのようです。

 

 

 さて、今日は6月21日、夏至です。

一年のうちで昼間の時間が長く、太陽の力が最も強いとされる日です。

 

 太陽信仰にまつわる物語は世界のあらゆる場所で語られていますが、この島国に暮らす日本人達はこの光に対峙して、どのような文化を育んだのでしょうか。奇しくも日本の夏至は梅雨の時期と重なります。きっと多くの人々は強い光よりもどんよりとした雨雲のほうを長らく見つめてきたのかもしれません。しかし、だからこそ日本の夏至の本来の意味と価値が現れてくるともいえそうです。

 

 夏至の日だけに太陽の光が差し込むように設計された古代の磐座は、まだ「日本」が現れる以前の素の姿を見せてくれています。太陽の光はやがて農耕の神となり、そしてこの列島を治める為政者によって太陽信仰と天皇が結びつけられ、権威的な祖神となって伊勢の地に奉られるのです。

それらは列島に漂う風土というフィルターを通して映し出された固有の物語なのです。


ko watanabe



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