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水の街

  • 執筆者の写真: FRACTUS 編集部
    FRACTUS 編集部
  • 3月15日
  • 読了時間: 2分

更新日:3月19日


啓蟄のターンは、宮島紀行です。

宮島に向かうJR西日本宮島フェリーは、オンシーズンには10分毎に一便運航しており、所要時間も片道10分の快適な乗船が可能です。

船着き場から見える大鳥居に、旅の気分も上がります。


島に降り立つと見えてくるのは宮島表参道商店街。

名物の牡蠣やもみじ饅頭も定番ですが、私のお勧めは穴子のフライです。

フィッシュ&チップスのようにテイクアウトしてテラス席で頬張ると、おいしそうな匂いに釣られたのか鹿さんが寄ってきます。



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五重塔を目指して歩くと、其処此処に愛らしい木版の献灯が掛けられ、街に彩りを添えています。

これから春に向かう時期、宮島では今日の繁栄を築いた平清盛の遺徳を偲び清盛神社祭が行われる他、お釈迦様の誕生を祝う花まつりも開かれます。

仏に手向ける閼伽水はサンスクリット語のarghaの音写で、功徳水とも呼ばれます。

日々の暮らしの中に穏やかに信仰が息づいていることを感じます。






島では水は貴重です。

「誓真釣井」として島の人に大切にされている井戸があります。

誓真は江戸時代に生きた人で、伊予の武士の家の生まれでしたが身分を捨てて宮島に渡り、米屋を営んでいました。

ある冬の日、着物を米に替えようと訪れた母子の貧窮した暮らしぶりを憐れみ、得度を決意します。

そして天明の大飢饉の最中、飲料水の不足に苦しむ島民の為に多くの公共事業を起こしました。

島内には誓真が掘ったとされる井戸のうち5か所が現在も使用されています。


また、誓真が弁財天の持つ琵琶の撥から着想を得て考案した宮島杓子は、すっきりとした形の美しさや使い勝手の良さから大ヒットとなり、製法を伝えた島民の暮らしを向上させました。

宮島歴史民俗資料館には誓真作のオリジナルが大切に保存されています。



宮島には時の権力者や文化人など多くの崇敬者からの寄進がされましたが、本当に街を支えて来たのは、200年のベストセラー商品を生み、枯れない井戸を掘った誓真のように、日々この島で暮らしを営む人々です。



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